パナソニックの「今」を伝える

心地いい室内環境を科学する。インドア エア クオリティ~Indoor Air Quality~

2017年9月22日

特集

心地いい室内環境を科学する。インドア エア クオリティ~Indoor Air Quality~

パナソニックは、健康で快適な生活を過ごすための"IAQ=インドア エア クオリティ(Indoor Air Quality):室内空気質"を徹底的に追求してきた。住まいの高気密・高断熱化や省エネルギー化が進む中、ヒト(人)がくつろぎ、ゆったりとした心理的充足を、どのように"インドア(室内)エア(空気)クオリティ(質)"で満たそうとしているのか。今回、「室内空気質」を探求し続ける研究現場に迫った。

ヒトと空気と住宅換気

ヒトは、1日に18キログラムの空気を体内に取り入れる。空気のほかに、ヒトは食事を約1.3キログラム/日、水分を約1.2キログラム/日、体内摂取する。比べるまでもなく、1日で体内摂取量の一番多い物質は「空気」だ。ヒトの生活にとって「空気質」は大切な要素であり、アレルギーや感染症など健康への影響もゼロではない。

空気中の健康影響因子

空気中の健康影響因子

また、人は生活時間の約8~9割を建物の中で過ごす(※1)といわれる。パナソニックエコシステムズは100年以上にもわたり、私たちを包み込む「空気」とともに歩んできた。近年においては、人の生活に大きく関わる室内空気の浄化対策として、以下3つの観点から事業を展開している。

・給気:外から有害な物質の侵入を阻止する
・排気:室内の有害な物質を浄化・排出する
・循環:菌や臭いを抑制し、快適な気流を生み出す

パナソニックのIAQ

給気・排気・循環のIAQ(インドア エア クオリティ)

換気方式の進化

生活スタイルによる換気方式の変化


そして、この1世紀の間、人の生活スタイルが大きく変化するとともに、建物の換気方式も進化してきた。1960年頃(昭和30年代)には、台所の煙や浴室の湿気を換気扇で住まいから排出する「局所換気方式」が導入された。給気口や窓、ドアなどから外気を取り入れ、換気扇で汚れを排出する第3種換気方式は、現在も広く採用されている。

建物の高気密・高断熱化が進んだことを背景に、日本国内では2003年(平成15年)、シックハウス対策として「24時間機械換気設備」の設置が義務付けられるとともに、給気・排気ともに機械換気する第1種換気方式が増加した。日本や欧米においては、2010年(平成20年代)頃より、省エネルギー効果の高い「熱交換換気方式」の導入も増えてきており、ZEH(※2)やスマートウエルネス住宅の普及に伴い、重要な換気方式として注目されている。

3つの換気方式

3つの換気方式

パナソニックのテクノロジーとIAQ研究

パナソニックの「全熱交換形」第1種換気方式は、当社独自開発の和紙を素材とした薄膜材料を、特殊な生産手法で一体化成型した「熱交換素子」を採用している。高い熱交換率を達成したキーデバイスを搭載する全熱交換形換気扇(※3)は、2017年製モデルでは2004年製モデルに比べ20%以上の全熱交換効率を向上させるなど、熱交換技術に関する研究開発を継続して進めている。

■ 注目の「全熱交換形」換気方式

「全熱交換形」換気方式とは、屋内外の空気を換気する際、入れ替わる内気・外気双方の温度、湿度を回収する方式のことで、この換気方式を支えているのが、「熱交換素子」だ。

熱や湿度は、高いところから低いところへ移動する。例えば、暖房時の温かく湿った室内の空気が「熱交換素子」を通過し屋外に排出される際、「熱交換素子」は屋内で暖められた空気の熱と湿度を、屋外の冷たく乾いた新鮮な外気(戸外から給気される空気)に移して室内に送り込む、という仕掛けだ。

パナソニックの「全熱交換素子」は、給気、排気の間で温度(顕熱)と湿度(潜熱)を同時に交換・回収する全熱交換効率において、約70%を達成している。

熱交換気のしくみ

「全熱交換形」換気方式のしくみ

また、パナソニックは、建物内の空気のあり方すべてを、IAQ研究の対象と捉えている。これまでの空気質対策は、健康に影響を及ぼす可能性のある環境因子を含めた汚染物質など、人にとっての有害物質(ネガティブインパクト)を排除することに注力されてきた。しかしながら、これからは健康や快適性といった心地よさ(ポジティブインパクト)を提供し、さらなる上質な暮らしを届けていくことが求められている。

当社は、住宅の高性能化に伴う新たな住環境でのIAQを進化させるため、2017年6月、研究開発拠点のある愛知県春日井市に体験型実験住宅"IAQ Labo"をオープンした。ここでは、温度、湿度、清浄度と気流の4指標に着目し、「全熱交換形」第1種換気方式や最新のIAQを体験する場を提供し、被体験者の体感データを取得、分析している。

IAQ Labo概観

IAQ Labo 概観

気流に着目。IAQに新しい価値を。

空気調和の4要素

温度、湿度、清浄度に、「気流」のコントロールの要素を追加

パナソニックは、人に優しい暮らしをサポートするため、これまでにも給気・排気・循環の観点から換気扇や空気清浄機などにより「室内空気質」を改善してきた。従来のIAQの考え方は、温熱快適性に影響が高いとされる、主に温度、湿度、清浄度、の3要素を快適範囲に収めることを基本としてきた。

今後は、この3要素に「気流」条件を加え、感性的な心地よさを追求していく方針だ。室内の「気流」をコントロールすることで、IAQの新しい価値を創出し、戸外のライブ感や臨場感に満たされる室内生活の実現を目指す。しかし、人の目では見えない空気の機能的価値や心地よさ、健康に配慮した最適な空気環境を、どのように「見える化」していくのか。

当社では、気流のゆらぎをある一定の範囲で制御してより自然風に近い状態にすることや、生活シーンに応じて求められる気流を創っていくことに挑戦している。気流は、強すぎると不快感が増す。弱いと、空気がよどむ。"IAQ Labo"では、気流の強さなど、条件をさまざまに組み合わせ、多様なバリエーションに対する評価データを収集している。

この「気流」パターンに応じた、その時々の受け手の感覚やイメージを集め、分析することで、季節や時間帯に応じた様々な生活シーンにふさわしいIAQを追求している。このような施設でのIAQ研究成果を、換気扇、空気清浄機など、今後の製品開発に生かしていく。

気流シミュレーション例

IAQ Laboにおける気流シミュレーションの一例

パナソニックのIAQ事業

パナソニックエコシステムズは、1913年(大正2年)、扇風機の製造を始めた。1918年(大正7年)には、海外での事業がスタート。以来、70カ国以上にもおよぶ国や地域での暮らしに密着し、換気システムでのグローバルシェアNo.1を達成しており(当社調べ)、IAQに関するノウハウを蓄積してきた。

中国では、日本国内と同様に「空気質」への意識が非常に高く、PM2.5対策や省エネ対応として熱交換気システムのニーズが高まっている。また、北米においても住宅のZEH(※2)化が加速しており、省エネ、静音、長寿命という当社換気扇の強みに加え、ネットワーク化等への対応が求められている。

国・地域によって違う住宅"

国・地域によって違う住宅(イメージ)

また、世界を見渡せば自然と調和した開放型住宅に暮らし、「自然換気方式」が主流の地域も多く、建物の進化に応じた換気文化の普及で、需要開拓を行っていく。海外展開をさらに強化することで、パナソニック エコシステムズは、2018年にはIAQ分野(空質関連事業)で、1,400億円の事業規模を目標としている。

パナソニックは、これからも確かな"モノづくり力"をベースに、海外、特に中国、北米、アジア、アフリカなどの地域へと事業を積極的に展開し、グローバル各地それぞれの気候、住環境、文化に適応した製品とソリューションで、「空気」による心地よさと快適性をひたすらに追求していく。

■ 窓から吹き込む風の「爽快感」を届けたい

「人は、自然の中で全身に風を受けるとき、『心地がよいな』と感じています。私たちは、暑くも寒くもない快適な室内空気を動かすことで、窓から吹き込んでくるような"心地よい風"を創っていきたい。窓が開けづらい室内でも、屋外の風がもたらす「爽快感」を生み出したい。そのためにも、室内気流をより自然な風として体感できる風速や風量など、あらゆる条件下での快適さを徹底的に調査しています。多くの方々へ、私たちの考える優しい空気をお届けし、お客様に喜んでいただくことができればと思います」。

IAQ Labo研究員

研究員の皆さん:IAQ Labo内で(パナソニック エコシステムズ(株)R&D本部)

※1 個人差があります。出所:塩津弥佳ほか(1998)「日本建築学界計画系論文集」第63巻第511号、49頁、図6-1(平日)を参考。
※2 ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのこと。国内では、2020年までに新築戸建て住宅の半数以上のZEH化を目指す。
※3 「IAQ制御」搭載住宅用熱交換気システムは、「平成28年度省エネルギーセンター会長賞」(主催:一般財団法人省エネルギーセンター)を受賞。

発表年月
発表年月