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人と共存するロボット技術

2016年9月15日

特集

人と共存するロボット技術

ロボットの活用が私たちの暮らしに急速に広がっている。 当社は、人と共存するロボットとして、ロボット掃除機「ルーロ」、病院内で薬や検体を自走して運ぶ「HOSPI」やロボット介護機器「リショーネ」を発売。また、熟練軽作業を行うロボットの実用化や、農作物の収穫ロボットの開発など、新たな分野にロボット技術活用事業を展開しようとしている。 「人と共存するロボット」とはどんなものなのか、どんな技術が必要なのかについて、あらためて紹介する。

なぜ今ロボットが注目されているのか?

ロボットは、これまで工場の組立てラインなどに用いられるものづくり分野が主流だった。しかし今、ものづくり分野だけでなく、「サービス」「介護・医療」「農業」「インフラ・災害対応・建設」など私たちの生活に関わる幅広い分野でロボットの活用が期待されている。その背景には、超高齢社会の進展による高齢者率の増加や生産労働人口の減少という社会課題がある。その解決策として、国は今後5年間を「ロボット革命集中実行期間」と位置付け、官民挙げてロボットを成長産業へ育成しようと推進している。

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経済産業省が発表した「2012年ロボット産業の市場動向」から試算すると、従来のものづくり分野である第2次産業用のロボットの国内市場は、2018年に1兆円、2024年に約1.5倍の1.5兆円に成長すると推定される。しかし、それ以上に第1次産業の農業関連ロボット市場は5倍、第3次産業のサービス、物流関連ロボット国内市場は7倍と急速な成長が見込まれている。

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当社においては、ものづくり分野で実装機や溶接ロボットなど、事業としてグローバルに競争力のある産業用ロボットが既にある。一方、当社が持つさまざまな商品や技術の融合を強みに、社会で期待される「サービス」や「介護・医療」「農業」「インフラ・災害対応・建設」などの幅広い分野で、人の暮らしや生活を支える生活支援ロボットの開発、商品化に取り組んでいる。

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ロボットの3つの定義とは

ここで言うロボットとは、経済産業省の定義を参考にすると、
①対象に関する情報を計測する「センサ」を持ち、
②計測した情報を基に認識・判断する「知能・制御」があり、
③その判断の結果として動くための「モーターなどの駆動系」を備える、
知能化した機械システム。人間に当てはめれば、それぞれ目(計測認識)、脳(知能)、手(操作)および足(移動)の機能にあてはまる。

これらの機能を、具体的に生産技術本部が開発している「トマト収穫ロボット」に当てはめて説明する。このロボットは、従来人の手によって行っていた温室でのトマト収穫作業を自動化するために開発されたもので、現在は国内の大規模農園で実証実験を進めている。

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トマト収穫ロボット

高度な収穫作業を自動化「トマト収穫ロボット」

  • 熟れているトマトを判定するカメラと距離画像センサ
    収穫にあたり、まず人間の目の役割にあたるカメラと距離画像センサが、トマトの色や形、位置などの情報を検出する(計測認識)。この計測した「トマト」に対して、プログラムにより「トマトの色」「マニピュレータによる収穫の可否」を確認し、収穫を判断(知能)したら、果実にキズをつけないように開発された「収穫用マニピュレータ」を動かす(操作)。
  • 繊細かつ効率的な収穫用マニピュレータ
    トマトなどの傷つきやすい、繊細な果実を効率的に収穫するために、円形のマニピュレータを使い、ぶどうの房のように鈴なりに実っている果実を繋いでいる小果梗を切断し、ダメージを与えずに収穫する。果実と小果梗それぞれを押さえた上で、適切な力で引き離して分離するという、人間の収穫動作から学んだ方法を開発した。
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人との共存に必要な安全性の保証

従来の工場などの特定の隔離された場所で作業をするロボットではなく、人の行動圏内での活動、さらには生活支援を行うロボットに何よりも必要なことは、人共存環境下で人の安全を確保することである。 こうした生活支援ロボットの安全性を規定するのが、2014年2月に発行された国際規格「ISO13482」だ。当社はこの「ISO13482」を検討する国際会議に当初から参画し、世界的なロボットの安全性に関する標準づくりに携わるとともに、世界初の認証を取得している。さらには「ISO13482」ではカバーしきれないロボットの種類に応じた詳細な安全基準を、日本において規定する「JIS B 8446」を関連メーカーとともに作成。世界に先駆けた安全規格として、ISO規格に提案をしており、日本が世界的なロボットの標準化を主導できるよう取り組んでいく。

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家電メーカーとして人と接触する製品を開発してきた技術、また、日本を代表する立場で安全規格づくりに参画してきた世界トップレベルの技術と実績で、当社は人と共存するロボットの安全性を担保する技術をコア技術としてロボット開発を推進していく。

社会課題を解決するソリューション事業として展開

今後、当社は、ロボットを構成するデバイスや安全担保の技術の強みをベースにしながら、ロボットの3要素である、どうやって「見るか」、「考えるか」、「動かすか」をお客様視点で作りあげていく。作りあげたロボットは単体で完結するわけではなく、通信・ネットワークにつながるICT技術、他の機器と色々な情報のやりとりを可能にするIoT技術、さらにはより賢く見て、考えて、動くためのAI技術と連携しながら、社会課題を解決するソリューションとして、さまざまな分野に展開していく考えだ。

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安全・安心、優しさ、面白さのあるロボット技術を目指して

人と共存するロボットの登場は2000年前後から。当時は、シーズ志向の開発姿勢もあったが、2010年ごろから、まず最初に現場に入り込み、徹底的に業務分析をするようになった。それは、「お客様のお困りごとは何か」を理解することが一番重要だと気づいたからだ。ロボットはまだまだ世の中に浸透しておらず、お客様には「ロボットって何ができるのか?」というイメージがわかないところが難しいところ。プロトタイプをみせるなど、イメージを伝えやすくしながら、1回のPDCAをどれだけ早く回せるかが大切だ。

また、ロボットは単体ではなく、ネットワークや他のデバイスなどと連携し、ICTやAIも絡めてシステムアップすることでソリューションとしての大きな価値につながる。その意味ではロボット事業というものではなくて、あくまでもソリューション事業を目指すべきだ。パナソニックが持つデバイスやこれまで家電メーカーとして人と触れ合う製品づくりで蓄積してきた技術など、さまざまな技術を融合しながら幅広い分野でロボット開発に取り組んでいけるのが強み。今後も私たちは、安全性を担保する技術をコア技術として、人と共存する安全で安心な存在として、また人への優しさや面白さを兼ね備えた存在として、身体的にも精神的にも人に寄り添うことのできるロボット技術を開発し、ロボティクスを活用した事業を早く成長させていきたい。

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今回お話を聞いた 安藤健さん
生産技術本部 ロボティクス推進室 開発二課 課長代理 博士(工学)

発表年月
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