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受け継がれるモノづくり 住宅用雨とい「アイアンシリーズ」

2015年12月18日

特集

受け継がれるモノづくり 住宅用雨とい「アイアンシリーズ」

日本の家屋に欠かせない「雨とい」。長い間、コア技術を磨き続け、雨といの進化を支えてきたパナソニック栗東工場の取り組みを紹介する。

独自構造で高占有率を誇る雨とい「アイアン」

「掘り抜き井戸」という精神がある。地下水脈にまで到達するほど井戸を掘り進めば、水は枯れることは無い。事業も同様に、徹底して掘り抜けば必ず成功するという、松下電工(現 エコソリューションズ社)に受け継がれてきた精神だ。

パナソニックは住宅用雨といを1958年に発売して以来、エコソリューションズ社栗東工場において、モノづくりを地道に掘り進めている。

雨といの役割は、雨水による住宅の外壁や基礎部分の腐食を防ぐこと。長い年月、寒暖の差や風雨、時には雪やひょうにも耐え、晴れていても太陽の紫外線などを受け続ける。厳しい環境下で長い期間使用される商品という意味では、当社グループ商品群の中でもトップクラスと言える。

当社は1982年、屋根の軒先に水平に取り付ける「軒とい」の芯材に、業界で初めて金属を使用した「アイアン」シリーズを発売した。この構造は現在でも当社独自であり、温度変化による伸縮や衝撃への強さの点で、単なる塩化ビニール樹脂製の雨といと比べ、耐久性が格段に優れている。また、耐候性のある樹脂をかぶせることで、紫外線などを原因とする樹脂の色抜けや白化がなく、数十年にわたり施工時の色を保ち、住宅の美観を損ねない。

「『アイアン』は品質が優れているにもかかわらず、価格は樹脂製と同価格に設定したこともあり、発売当初から非常に高い評価を得ました」。栗東工場の竹田國浩さんが語るように、代理店や工事店、ハウスメーカーからの信頼性も高い。当社の軒といは現在すべてアイアンで、高い市場占有率を維持している。

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    竹田國浩さん
    従来は『5年で半人前、10年で一人前』と言われ、人材を育成してきましたが、今は標準化することが重要です。また、工場独自の社内検定や職長などがリーダーとなって技能伝承に取り組んでいます。

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    アイアンの断面図。屋根の軒先に沿って取り付ける雨とい(軒とい)の芯材に、亜鉛メッキを施した鉄を使用し、その上から硬質塩化ビニール樹脂、さらに紫外線劣化に強い耐候性の樹脂をかぶせた3層構造となっている。

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    屋外暴露試験場。施工後およそ9年を経過した雨とい。樹脂製(上段グレーの2点)は温度変化により伸縮の程度が非常に大きい。アイアン(中段黒色)は曲がりがほとんど発生していない。

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    栗東工場の屋外暴露試験場。1982年の製品も見られる。

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    1970年に操業を開始したエコソリューションズ社栗東工場。雨とい専門工場としておよそ5000品番の商品を製造している。

雨といの歴史と販売網

雨といの歴史は平安後期の文献に残っており、東大寺法華堂には、現存する最古の排水用雨といが見られる。江戸時代には、都市化に伴う防火対策として瓦ぶきが奨励されたことから、木や竹を使った雨といが普及した。

明治時代に入り、西洋文明とともに、レンガや石油の容器としてブリキが国内に出回る。これを廃品として加工する職人が出始め、金属製の雨といの加工技術が進歩し、普及した。

第2次大戦後、軍事機密であったプラスチック技術が一般公開され、ビニール雨といが開発された。それまで金属製雨といを施工していた板金店は、部材加工の必要が無く接着による施工ができるプラスチック雨といを受け入れ、普及が進んだ。

当社は1958年に、特許を取得した「二重差込式継手」をはじめとしたプラスチック雨といを発売。しかし主要な取引先であった建設資材業界と電気製品業界ともに雨といは取り扱っておらず、販売網の構築に苦心した。そこで以前の金属雨といを扱っていた鉄鋼関連の代理店に向け、販路開拓を進めた。1963年に「ナショナル雨樋建材会」を発足し、現在に至るまで販売網の基礎となっている。

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(上)東大寺法華堂の雨とい。
(下)当社第一号製品「特許二重差込式継手」(1958年)。

栗東工場のコア技術「金属と樹脂の複合成形」に迫る

軒といの成形工程は「押出成形」。一般の樹脂だけの押出成形とは異なり、アイアンの押出成形工程は、まず芯材となる鉄を、雨といの形状に加工(フォーミング)し、その後に芯材を金型に挿入しながら樹脂を成形していく点が特徴。竹田さんは、「この押出成形が栗東工場のコア技術です。ポイントはフォーミング、金型設計、材料配合」と語る。アイアンの成形を開始した1982年以来、試行錯誤を繰り返して現在の形に至っている。

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(左)芯材を数段階の金属の枠に通すことで、少しずつ雨といの形に曲げていくフォーミング工程。芯材を曲げていく形状や、機種切り替えなどに工夫が蓄積されている。
(中央)加熱された樹脂が着色剤などと押出機で混練され、金型に送り込まれる。フォーミングされた芯材が加熱され金型を通ることで、写真のように白い樹脂が被覆された雨といとして成形される。冷却後 、軒といとして標準的な4メートル弱に切断され、梱包工程に送られる。芯材のフォーミングから成形、冷却、切断まで、全長20メートル程度の非常にコンパクトな生産工程だ。
(右)金型のメンテナンス。メッキ状態によって樹脂の流れが変わるので、常に同じ状態を保つ必要がある。アイアンの場合、金型の中に鋼材が通る上で均一に樹脂成形するため、形状も工夫している。

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    水谷 学さん
    材料として熱で溶融した時の状態と、固化した時の商品性能。いずれもここだけにしか無い特殊な樹脂を独自で開発し、長年改良をしています。今後も進化させる必要があります。

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    近藤龍彦さん
    押出成形は、連続で樹脂を流し続けるので、成形条件の設定が悪いと樹脂の粘度が変動しやすい。そこの見極め、常に安定した樹脂の状態を保つ条件の設定に独特のノウハウがあります。

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    藤井和則さん
    今の時代、革新的なモノづくりが注目される中、栗東工場はどちらかいうと従来のやり方を守っています。大きな変化ではなく小さな改良の積み上げを続けてきたことで、お客様の信頼を勝ち取っています。

お客様の要求が工場を鍛える

外周が円形の屋根や、途中で段差がある屋根にも雨といをつける必要があるなど、汎用の部材では対応できない場合がある。栗東工場はこうした屋根の形状に合わせる雨といの特注部品の製作要望にも対応している。展示会で実演すると来場した工事店様が注目し、人だかりができるという。こだわりのモノづくりが人を魅了する一面だ。

栗東工場にはさまざまなお客様が訪れる。建築現場で実際に雨といを施工する工事店様からは、取り付けやすさに関するご意見を頂く。少しの工夫で設置効率や確実な施工につながる重要なご意見だ。

一方、ハウスメーカー様のご意見は視点が異なる。屋根との一体感を追求し、「軒といを接続する継手部品が外側から見えない構造に」といった、最新の家のデザインに合わせた商品が要求される。栗東工場はこうしたそれぞれのお客様と接することでその技術を鍛えられ、進化を続ける。

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(左)汎用品をカットし、角度をつけることで屋根の勾配に合わせる。注文図面を読み取り、要求に合わせた切断には熟練の技が必要だ。
(右)樹脂の棒を溶かして、部品同士を溶接。立石保弘さんは、「熟練の先輩がいなくなり、技術を伝えるために作業の見える化に取り組んでいます」と話す。

立ち止まらない。われわれの強みは、改良・評価の繰り返し

髙松郁夫さん
エコソリューションズ社ハウジングシステム事業部
外廻りシステムビジネスユニット BU長

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当社の雨とい「アイアン」は、金属と樹脂の独自の複合構造が強みであり、それゆえに開発には非常に苦労しました。他に参考にする事例もなかったことから、設備はもちろん、材料設計や金型設計から評価技術に至るまで、ほとんど自前で確立しました。少しずつ改良し、評価し、さらに改良する――この繰り返しの蓄積が栗東工場の一番の強みと思います。

もちろん先進的な外部技術も吸収しますが、「コア技術」は持ち続け、追求することは大事と考えています。日々の生産でも、商品を「目で見る」「触る」「臭いを嗅ぐ」、まさに五感を使って感じ取り、微細な変動を調整していくことが必要。それだけ奥深いものがあるのです。そういう意味で、工場のメンバーも、今の栗東工場のモノづくりが完成形とは思っておらず、もっともっと良くする思いで活動しています。雨といを実際に施工する工事店様にも頻繁に工場に来ていただき、ご意見も頂きながら品質を確かめて、納得して使っていただく。厳しい要望もありますが、それに対応することでまた信頼が高まり、今の占有率の高さにつながっていると考えています。

一方で、外廻りシステムBUとして、栗東工場と、もうひとつの拠点である米原工場が培ってきた技術を生かす、「強み伝い」の考え方で、こうした樹脂と金属の複合成形技術など、押出成形技術を使ったLEDの導光棒や金属塑性加工技術を使った機能屋根システムなど、コア技術を生かした新しい事業で成長していこうと考えています。

発表年月
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