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Back Stage:ポータブルテレビ「プライベート・ビエラ」開発の主役たち

2015年10月23日

地デジ化特需の終息による販売の落ち込みや「クラウド」の台頭で、存続の危機を感じたビデオ事業。生き残りを懸け、新たに開発したプライベート・ビエラは、その通信と防水の性能の良さで、ポータブルテレビの市場をけん引するまでに成長した。今年6月、さらに進化したT5シリーズなどの新製品が誕生。この商品には、将来を見据え、どんな困難にもお客様の喜びを第一として取り組む、若手技術者のこだわりが詰まっている。

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Chapter 1: 1カ月に及ぶノイズとの闘い

新たなプライベート・ビエラは、昨年のモデルより、「さらに遠くまで電波がつながる」をコンセプトに開発に取り組み、使い勝手を向上させた。ポータブルAV商品は、外観がお客様に選ばれるポイントであるため、決定したスタイリッシュなデザインを全く変えることなく商品化したという。

谷口彰史さんは、電波を送信するチューナー部、受信するモニター部、それらをつなぐWi-Fi(機器間通信部)を担当している。Wi-Fiは、「家じゅうどこでも」をコンセプトにするプライベート・ビエラの命綱であり、進化の鍵を握っている。

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谷口彰史さん

今回の開発で、谷口さんたち回路設計のメンバーを苦しめたのは、機器内で発生するノイズだ。Wi-Fiの受信電波が弱い場合でも、高解像度の映像を途切れることなく映し出すためには、ノイズ除去は絶対だった。システムの高性能化でノイズが発生することは分かっていた問題。このため、谷口さんたちは開発当初からノイズ対策を重ね、適切な手を打ってきた。それにもかかわらず、工場に引き継ぐ直前に、除去したはずのノイズが全モデルにおいて出現、主力のT5シリーズには特に顕著に表れた。

回路設計部門を挙げてノイズの原因を探ったところ、放熱のために装着している板金がノイズを放射していることが分かった。デザインを守るためデバイスの配置に制約がある中、谷口さんはノイズ抑制のために銅箔を巻きつけ、電波吸収シートを貼るなどの対策を実施。さらに、ノイズを放射する板金の形状を部分的に変更することで、徹底してノイズ低減をすべきと提案した。通常は行わないこの段階での板金形状の変更に、すでに金型を手配していた工場部門は、厳しい反応を示した。工数を増やしてしまうとともに、設計的にも筐体のバランスや放熱対策を見直さなければならない。谷口さんは身を削られるような思いだったが、何度も会議を持って工場や関係部門に理解を求めた。最終的に至ったのは「お客様が満足する商品を市場に出す」という考え。全員がこれに同意した。そして、谷口さんは性能に影響を及ぼさない最適な板金形状の変更を、技術メンバーとともに考え実施した。

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(左から)2012年発売モデルはサイズ10インチと19インチ。2013年、業界初の防水での15インチを開発。2014年モデルはアンテナを内蔵。そして、2015年6月発売の新プライベート・ビエラは、より性能を高めラインアップを拡充した。写真は主なもの

Chapter 2: わずかなバラツキにも妥協しない

約1カ月かかってノイズ問題が終息し、やっと量産前の試作に入った時、谷口さんは5台に1台程度の割合で、商品にわずかなバラツキがあることを発見した。それは、例えれば、他より3歩手前あたりで電波が途切れるような現象で、すでに目標のスペックは満足している中、不具合とはいえない誤差だった。営業部門からは試作品を待ち望む声が聞こえ、プレッシャーがのしかかったが、谷口さんは冷静に修正に取り掛かった。一台ずつ通信状態を解析した上、制御システムの切り替え部分に課題があると仮説を立て、ソフトウエア担当者に協力を仰いで課題解決に導いた。

ここまでバラツキにこだわった理由を、谷口さんは「商品を手にした全てのお客様に、『さらにつながる楽しさ』を味わってほしいからです。また、こうした取り組みは、今後の展開にも生きてきます。ですから、どんな課題も放ってはおけません。なんとしてもモノづくりの上流で問題を解決しなければならないのです」と説明する。

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Wi-Fi性能を確認する実験室で

家中どこに持っていっても、途切れることなく通信できて視聴を楽しめる。そのためには、常に、100%の能力が出せるWi-Fi性能の作り込みや、ノイズ抑制のノウハウを積み重ねておくことが求められているのだ。

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谷口さんの上司、三浦和彦さん

体力、メンタルともにつらくなるほど、商品開発は追い詰められる時があります。「もうこの程度でいい」と妥協してしまうとお客様満足は得られないし、私たち自身の実力にもならない。谷口君は妥協せず、最後までやり抜いた。ここで得た自信と経験は、必ず次につながります。

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日常での使用を想定し、Wi-Fiの実証実験は、当社の直営住宅を借りて実施

Chapter 3: 気迫の訴えが材料メーカーを動かす

使うお客様の「安心」につながる防水。その性能の高さもプライベート・ビエラの特長だ。開発を担当する後藤一孝さんは、今回のモデルで、従来のゴム製パッキンに代わる新材料として、ゲル状のシール剤を導入し、防水機能を飛躍的に改善した。

無数の候補から求める材料を探すこと約2年。試験を繰り返し、「使える」という手応えをつかむまで1年。量産を翌年の春に控えた2014年11月、ようやく求めていた材料にたどりついた。

後藤さんは材料メーカーに出向きプライベート・ビエラが目指す防水レベルを説明。ホワイトボードに量産の日程から逆算したスケジュールを書いて、「御社の材料で実現したい。今日、必要なサンプルをつくってもらえたら、すぐに信頼性試験を実施して導入の決断をします!」と訴えた。材料メーカーの担当者たちは後藤さんの熱意に共感、最優先でサンプルを作成してくれた。

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後藤一孝さん

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    水深1メートルに30分間放置するテスト

  • 防水実験。3メートル手前から1分間に100リットルの水を3分以上放水

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後藤さんの上司、脇口幸治さん

ある海外の工場では、後藤君が来ると聞くと、時間をかけて調整できるよう「後藤シフト」を敷くと聞きます。自らまず試して、その結果を持って粘り強く仕事を進める後藤君。だから周囲の協力が得られるのです。

Chapter 4: 全員会議で不安を払拭

新材料を導入し新工法を完成させるには、1年は必要だ。無理をせず、次のモデルから新材料を採用する選択肢もある中、後藤さんは断固として、すぐに採用すべきと上司に進言した。「防水機能を高めると同時に、コストにも優れ、機器の薄型化に大きく貢献する可能性を秘めた材料です。挑戦する価値は十分にある。将来を見据え今やるべきだと思いました」と振り返る。

新工法を導入しつつ通常より短期間で量産するのは、工場側からすると、良品づくりの観点で不安が残る。そこで後藤さんは、技術部門や材料メーカーのメンバーを一堂に集め、生産拠点と電話会議を開いた。そして、「新材料を今、導入することは、次の展開につながる。多少のリスクはあるけど必ず乗り越えられます。頑張りましょうよ」と全員に訴えかけた。集まったメンバーは、その場で自らが抱く不安を全て吐き出し、全員で解決策を考えた。この会議を境に、皆の意識がさらに高まったという。また、材料メーカーの社長は、「成功するまで、なんとしても協力せよ」と社員を鼓舞し会社挙げて協力してくれた。

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「成功するまで協力せよ!」
松下幸之助創業者の経営理念に共感し、会社挙げての協力を要請してくださった材料メーカー社長。その後、同社は、試作の立ち上げ段階で何度も大阪の開発拠点にすり合わせに訪れ、生産拠点での量産立ち上げにも立ちあってくれた。新工法導入の裏には、こうした協力会社による心が熱くなる秘話もある。

社内外のメンバーによる一致団結した取り組みで、パイロット版の作成段階にまでたどり着いた。ここは技術者が商品を見定める最後のポイント。すぐに駆けつけるのが困難な海外の工場への引き渡しだからこそ、多くの技術メンバーが一台一台、入念に手作りした。こうした技術部門による最後まで手を抜かない仕事を引き継ぎ、工場での量産は順調に滑り出した。そして、全員の思いが一つになって短期間で導入した新材料・新工法による生産は、防水工程のタクトを大幅に改善し歩留まりも向上させるという成果をもたらした。

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量産に携わっている工場のメンバー。意欲が高く、挑戦の気風にあふれている

「皆の協力で要求を満足する生産ができた」

生産拠点の熱い現場リーダー
応 棟方さん

短期間での新工法導入は厳しかった。物性を確認し設備の購入を検討、塗布冶具の設計にも苦労しました。そんな中、技術部門や生産部門が協力してくれて、要求を満足する生産ができたことが、一番印象深いですね。高級感のある外観、簡単な操作性、優れた防水性能。料理をつくっている最中でも、シャワーの時でも、家中どこでも、さらに便利に使える商品に進化しました。ヒットすると信じています。

Chapter 5: 「お客様に喜んでほしい」。この思いでつながっている

家中つながるWi-Fi性能(*注)と、画面サイズ15インチでの防水性能の確立で、他の追従を許さないプライベート・ビエラだが、開発担当者たちは、半歩でも前進するために妥協せず、リスクにも立ち向かう。「考え抜いた解決のノウハウは、必ず次の進化を支える。この商品だけではなく、別の商品づくりにも生きてくる」。――事業部にはこの精神が風土として息づいているという。そして、ノウハウの横展開を惜しみなく図っていく。その根本は、「お客様に喜んでほしい!」。この思いが何よりも強いからだ。「商品に関わっている社員は全員そうだと思います。だから、性能、デザインなどお客様視点での開発目標は絶対に譲らない。この『譲らないもの』が全員で共有できているからこそ、壁を乗り越えられるのです」と2人は語る。

(*注)建物の構造や周囲の環境によっては、電波が届かない場合があります。

目下、プライベート・ビエラに立ちはだかる大きな壁は、自ら存在価値を創造しなければならないところにある。「使い方をどう広げていくか。実はここが最もハードな課題です。技術面では、新しい規格を導入したり使い方を広げるベース技術を開発しなければなりません。この商品を事業の柱に育てあげたいですからね」と谷口さんは抱負を述べる。そして後藤さんは、「どんな使い方をされても大丈夫な防水を実現させたい。取扱説明書に一切のただし書きがない防水レベルにする。これが私の目標です」と力を込める。

住宅コントローラーとしてハウスメーカーに納入するなど、プライベート・ビエラはBtoBへの展開も進められている。技術者たちの熱い思いを込めた商品の活躍シーンは、どんどん広がっている。

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(上)技術部門挙げて徹底したコスト削減活動を展開中。高品質と低コストを両立する部材メーカーを求め、海外のメーカーを訪問。写真は、中国での部材調達で

(下)谷口さんや後藤さんらが参加した、ブロガーイベント。お客様との直接コミュニケーションで、市場の反応を肌で感じ取った

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