【要旨】
パナソニック株式会社 ライティング社(代表者:伊藤 好生)は、独自の熱解析技術を駆使し、LED電球[1]の構造体を利用した放熱および熱伝導の最適化により、LED電球単体での放熱特性を改善し、業界で初めてとなる、断熱材施工器具〔2〕においても対応可能なLED電球(E17口金の斜め取付け専用タイプ[3])を開発しました。
【効果】
ライティング社は、「環境(省エネ、省資源)と人に優しい」を基本的な設計思想として技術開発を行なっており、白熱電球からLED電球などの省エネランプへの代替技術の開発と製品化を積極的に推進しています。現状、国内において 断熱材施工器具など、LED代替ができていない領域が残っています。
本開発のLED電球は、放熱特性を改善し、発光部の温度上昇を抑えることにより、器具内温度が高い断熱材施工器具への対応が可能となり、代替可能な領域をさらに拡大し、省エネランプへの置き換えを加速することが可能となります。
【特長および内容】
本開発の特長および技術内容は以下の通りです。
独自の熱解析技術により、LED電球の構造体による放熱特性および接合部を含めた熱伝導特性を改善し、発熱量を構造体に分散させる最適な熱設計を実現しました。さらにLED電球の表面からの熱放射を高めるため、新塗装材料を使用し表面放射率〔4〕を従来品※2)比の約1.3倍に高めています。これらの技術により、LED電球単体の放熱特性を改善し、発光部の温度上昇を抑えることで、器具内温度の高い断熱材施工器具においてもLED電球が使用できるようになります。
※2)従来品は当社LED電球LDA6L(D)-E17/BH
【従来例】
断熱材が施工された天井では、照明器具として断熱材施工器具が用いられますが、断熱材を施工しない場合に比べ、照明器具内の温度が高くなります。このため、LED電球の発光効率が低下し暗くなったり、あるいは寿命が極端に短くなったりするなどの不具合が発生することがあります。 このような理由により、断熱材施工器具においては白熱電球からLED電球に交換して使用することができませんでした。
【特許】
国内 8件 出願中
【特長および内容の詳細】
LED電球は、LED自体からの発熱による温度上昇により、LEDの発光効率が低下し暗くなったり、あるいは寿命が極端に短くなったりするなどの特性劣化を生じることがあります。このためLED自体からの発熱をどのようにして抑えるかといった放熱対策が、製品の優劣を大きく左右します。現状では、周囲温度が厳しい条件では使用できない場合もあります。特に断熱材施工器具においては、断熱材に覆われるため、通常の照明器具に比べて器具内温度が高くなります。このため、断熱材施工器具に従来のLED電球を使用すれば、LED自体の温度上昇によって短寿命となるため、使用することができませんでした。
図1 断熱材施工器具における温度上昇イメージ
そこで、当社では独自の熱解析技術を駆使して、(1)LEDパッケージとケース(アルミボディ)を緊密に接合することで熱伝導性を高め、(2)口金とアルミボディを繋ぐ部材として熱伝導に優れた樹脂ケースを使用し、(3)さらに今回アルミボディ表面に、表面放射率を向上させるための材料を混ぜ合わせた白色塗装材料を採用することで、表面放射率を従来品比約1.3倍に高める放熱技術を確立しました。この放熱技術により、断熱材施工器具で使用することが可能になります。
図2 LED電球の熱シミュレーション | 図3 当社独自の放熱技術 |
特に、断熱材施工器具は主に天井埋め込みのダウンライトで、小形電球用斜め取付け器具が多く使用されています。このため、本開発品を斜め取付け専用タイプとすることで、白熱電球からの代替領域をさらに拡大し、省エネランプへの置き換えを加速することが可能になります。
【用語の説明】
- 〔1〕LED電球
- 発光ダイオード(Light Emitting Diode:電気エネルギーを直接光に変換することのできる半導体発光素子)を光源として用い、点灯回路と一体化し、白熱電球と同じE口金をつけた電球です。一般電球タイプ(E26口金)、小形電球タイプ(E17口金)などがあります。
- 〔2〕断熱材施工器具
- 建物の防音および省エネルギー対策のため、断熱材を天井などに敷きつめる場合がありますが、そのような器具内温度が高温になる環境下でも施工可能な照明器具を断熱材施工器具といいます。
- 〔3〕斜め取付け専用タイプ
- E17口金タイプの小形電球用ダウンライトはソケットが斜め向きに配置されたタイプが多く、直下に多くの光を出すLED電球の場合、斜めに取付けることで、直下が暗くなるという問題がありました。これを解決するため、発光面を斜めに配置し、口金部回転機構を採用することで取付け後に発光面を下向きに調節できる斜め取付け専用のLED電球があります。
- 〔4〕表面放射率
- 物体表面からの熱の放射のしやすさを0〜1.0で表したもので、1.0に近いほど表面放射率が高いと言えます。物質やその表面の粗さなどによっても変化します。