【要旨】
パナソニックエコシステムズ(株)(社長:伊藤清文)は、高湿度空気の影響で浴室(ユニットバス)の壁面や天井面などに発生しやすいカビ(クロカビ等)の菌糸の成長を、独自の水破砕技術により作りだす微細水滴マイクロミストを使って抑制できる技術を開発しました。
【効果】
当社は、マイクロミストの湿度と温度が壁面に付着した菌糸の発育に与える影響に着目し、マイクロミストの温湿度制御により、カビ菌糸の先端細胞を破壊して成長を抑制し、浴室の不満である「カビ」の新たな発生を防ぎます。
【特長】
浴室のカビの抑制には、乾燥を保つことが一般的でしたが、浴室の壁面を一定の温度と湿度に保つことで、カビの成長を抑制できます。とくにマイクロミストを用いることで、浴室の壁面を広範囲に加温・加湿することができ、効果的にカビの成長を抑制できます。
【内容】
本開発は、以下の新技術により実現しました。
- マイクロミストにより浴室壁面の温度・湿度・時間を制御する技術
浴室の温度と湿度を、カビの成長を抑制できる環境にするためにマイクロミストを採用。温水から作った微細水滴が浴室の隅々に行き渡るように工夫し、浴室全体の温度・湿度条件(浴室壁面温度40℃以上、湿度99%以上、60分以上)を制御する技術を開発しました。 - カビ菌糸の成長を抑制するマイクロミスト湿熱条件の検証
ユニットバスの実環境、及びBCT法[2]により、カビが成長を停止する湿熱条件とメカニズムを検証しました。
【従来例】
従来の浴室内カビの成長抑制には、換気運転や温風による乾燥運転により、浴室内を乾燥させて湿度を低く保つ必要がありました。
【特許】
国内6件 出願中
【照会先】
パナソニック エコシステムズ(株) 経営企画グループ 広報
TEL:0568-81-1161 FAX:0568-86-0091
【内容の詳細説明】
1.マイクロミストにより浴室壁面の温度・湿度・時間を制御する技術
浴室の温度と湿度を、カビの成長を抑制できる環境に上昇させるためにマイクロミストを採用。温水から作った微細水滴が浴室の隅々に行き渡り、広範囲に温度・湿度条件(浴室壁面温度40℃以上、湿度99%以上)を作ります。これにより温風と比較して、効果的にカビの成長を抑制する温湿度条件を実現することができます。
壁面平均湿度:13〜17% | 壁面平均湿度:99% |
図1浴室内壁面温度の分布(左図:温風による運転。右図:マイクロミストによる運転)
試験条件:ユニットバス1.5坪、外気15℃・60%RH
(測定結果を元に当社にて作図)
また、浴室内が目標温度約40℃以上、湿度99%以上を60分維持できるよう、浴室や季節などの条件に応じて運転時間を設定します。
2.カビ菌糸の成長を抑制するマイクロミスト湿熱条件の検証
(1)ユニットバスの実環境におけるマイクロミスト運転によるカビ抑制効果検証
浴室にみられるカビ(Cladosporium、Aureobasidium、Phoma)の胞子を試験片に付着させ、浴室(ユニットバス)に設置して連続して結露させ、1日1回壁面温度が一定時間約40℃となるようマイクロミストを噴霧。(対照:マイクロミストの噴霧なし)
マイクロミストを一定時間、壁面が約40℃となるように噴霧した試験片は、カビ汚れの発生が抑制されることを確認しました。
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図3 浴室にみられるカビ(Cladosporium、Aureobasidium、Phoma)の胞子をJIS Z2911に基づき試験片に付着。試験片を浴室に設置し連続して結露させ、1日1回一定時間約40℃となるようにマイクロミストを噴霧(対照:マイクロミストの噴霧なし)。マイクロミスト噴霧によるカビ汚れの発生抑制効果を確認。(当社にて検証)
(2)BCT法[2]による、カビ菌糸の成長を抑制するマイクロミスト湿熱条件の検証
マイクロミストの湿熱条件を元に、浴室にみられるカビ菌糸(クロカビ等)に湿熱を与え、成長速度変化からマイクロミストによる抑制条件を評価しました。
浴室にみられるカビ菌糸(クロカビ等)に対してマイクロミストの湿熱条件で約40℃に上昇させると、菌糸の伸長が停止し、抑制効果が得られることが確認されました。
<1> BCT法によりカビ菌糸が成長を停止する温度を検証
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<2> BCT法により測定したカビ菌糸先端の顕微鏡写真
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<3> マイクロミストによるカビ菌糸の抑制メカニズム
図6 カビ菌糸の抑制メカニズム
浴壁面に付着したカビ(<1>)に、マイクロミストを噴霧すると、熱を帯びた結露水が薄くカビを包み込み(<2>)、カビ菌糸に損傷を与え(<3>)、カビの繁殖を抑制します。
【用語説明】
- [1] マイクロミスト
- ノズルから噴射した水を破砕する水破砕技術により作る微細水滴で、大きさは1ミクロン未満。
- [2] BCT法
- バイオセルトレーサ法(菌糸伸長速度による抗真菌活性評価法)のことで、カビの成長評価として使われる試験方法。
以上