プレスリリース

2008年2月5日

暗闇から太陽光下まで、人の眼を超える電子の眼を実現

世界初*、MOSイメージセンサのダイナミックレンジ拡大技術を開発

* 2008年2月5日現在、当社調べ


広ダイナミックレンジ・MOSイメージセンサ(データ容量:111KB)

【要旨】

松下電器産業(株)は世界で初めてMOSイメージセンサ[1]ダイナミックレンジ[2]を1千万倍にする回路技術を開発し、明暗差の激しい被写体を鮮明に撮像できるイメージセンサ技術を確立しました。今後、νMaicovicon®イメージセンサに本回路を搭載し、かつ 当社独自の無機材料イメージセンサ技術[3]と組み合わせることによって、車載カメラやセキュリティ用監視カメラなど幅広い用途に対応していきます。

【効果】

イメージセンサが撮像できる光の明るさの範囲は明暗比で千倍の60デシベル[4]程度であり、これよりも暗い領域は暗い背景に埋もれ、明るい領域は露出オーバーとなって白く飛ぶという課題がありました。そのため、例えば暗いトンネル内から明るい出口に向って撮像すると撮影者の近くは真っ暗に、出口は真っ白に写ってしまいます。今回開発したダイナミックレンジ拡大技術を搭載したイメージセンサは全画素[5]に独自のダイナミックレンジ拡大回路を内蔵することで、撮像可能な明るさの範囲をさらに1万倍拡げ、140デシベルのダイナミックレンジを実現しました。

【特長】

今回開発したダイナミックレンジ拡大技術の主な特長は以下の通りです。

  1. 撮像可能な入射光のダイナミックレンジを従来比1万倍の140デシベルへと拡大
  2. 動くものの撮像、動きながらの撮像に強いグローバルシャッター[6]を搭載
  3. ワンチップで広ダイナミックレンジを実現

リアルタイムの動画出力を可能とし、画像処理に必要な外部メモリが不要

【内容】

本開発のイメージセンサは、以下の新技術により実現しました。

  1. 一つのシーンを暗い領域と明るい領域それぞれに合わせて露光時間を変えた画像を複数枚取り込み、これらを画素単位で合成して出力する合成回路
  2. 撮像から読み出しまでの間、合成した映像信号を保持するメモリ素子を画素内に搭載
  3. 露光時間の異なる複数の映像信号を1個のメモリ素子で高速に記憶・合成を可能とするシンプルなメモリ回路

【従来例】

これまでのイメージセンサが撮像できるダイナミックレンジは60デシベル程度でした。ダイナミックレンジの広いシーンを撮像するには、異なる露光時間で撮像した複数の画像を外部のフレームメモリに記憶し、合成することで実現していました。そのため、なめらかな動画を撮影することが困難である上に、外部メモリがコストアップ要因となっていました。

【特許】

国内 4件、外国 2件 出願中

【備考】

本開発成果は2008年2月3〜7日に米国サンフランシスコで開催のISSCC2008で発表

【照会先】

半導体社  企画グループ  広報チーム     中小路  陽紀  TEL:075-951-8151
                          E-mail:  semiconpress@ml.jp.panasonic.com

【特長の詳細説明】

  1. 撮像可能な入射光のダイナミックレンジを従来比1万倍の140デシベルへと拡大
    イメージセンサは、マトリクス配置した個々の画素内に、被写体からの光を電気信号に変換するフォトダイオードを内蔵し、被写体の撮像を行います。フォトダイオードが変換できる光の明るさの範囲は、通常60デシベル程度です。60デシベルとは明るさの比で千倍に相当します。このような従来のイメージセンサでは、最も明るい領域と最も暗い領域との明るさの比が千倍以下の被写体しか撮像できません。被写体に、この明るさ範囲よりも暗い領域があればそれらは暗い背景に埋もれ、明るい領域は白く飛んで撮像されてしまいます。今回、ダイナミックレンジを140デシベルに拡大できたことで、1千万倍の明暗比まで撮像可能となりました。これにより、従来は暗い背景に埋もれていた領域をくっきりと、強い光の部分も白く飛ぶことなく撮像することができるようになります。
  2. 動くものの撮像、動きながらの撮像に強いグローバルシャッターを搭載
    従来のMOSイメージセンサはマトリクス配置した複数の画素を行単位で駆動するローリングシャッター[7]を採用していました。この方式では被写体からの光を電気信号に変換するタイミングが行毎に遅れるため、動いている被写体の画像が歪む、あるいは動いている撮影者が撮像した画像が歪むという問題がありました。今回、全画素が一斉に光を電気信号に変換するグローバルシャッターを搭載しました。動きのある被写体も、その一瞬を切り取ることができます。
  3. ワンチップで広ダイナミックレンジを実現。リアルタイムの動画出力を可能とし、画像処理に必要な外部メモリが不要
    従来、イメージセンサのダイナミックレンジを拡大するにはシーンの暗い領域や明るい領域に合わせて露光時間を変えた複数の画像を一旦外部メモリに記憶し、これらを合成することが必要でした。このため動画をリアルタイムで合成・出力することができないばかりか、画像合成に必要なメモリチップがコストアップの要因にもなっていました。今回開発したイメージセンサは画素毎にダイナミックレンジ拡大回路を内蔵することで動画に対応できる高速処理を実現しました。外部メモリを用いることなく広ダイナミックレンジ撮像が可能です。

【内容の詳細説明】

  1. 一つのシーンを暗い領域と明るい領域それぞれに合わせて露光時間を変えた画像を複数枚取り込み、これらを画素単位で合成して出力する合成回路
    被写体の暗い部分が明瞭に、また明るい部分が白飛びせずに写るように、3種類の露光時間で順に撮像します。それぞれの露光で得られた複数の映像信号は、画素に内蔵した合成回路で順に合成され、外部に出力されます。
  2. 撮像から読み出しまでの間、合成した映像信号を保持するメモリ素子を画素内に搭載
    3種類の露光条件による映像信号の取得と合成は、全画素で同時に行います。出力までの間、映像信号は画素内のメモリ素子に保持され、行毎に外部へ順次出力します。
    開発したイメージセンサは、保持特性に優れたメモリ素子を画素内に作りこんでいるために、全画素で同時に取り込んだ信号を出力するグローバルシャッター動作を実現することができます。
  3. 露光時間の異なる複数の映像信号を1個のメモリ素子で高速に記憶・合成を可能とするシンプルなメモリ回路
    外部メモリ方式の場合、異なる露光条件で取得した映像信号を複数のメモリチップに記憶しています。この構成をイメージセンサにそのまま内蔵した場合、メモリ素子が占有する面積が大きくなりすぎ、現実的ではありません。今回、合成回路の構成を工夫することにより、1個のメモリ素子で複数の映像信号に対応できるようにしました。また、メモリ素子を内蔵したことにより、信号処理を高速化できました。

【用語の説明】

[1]イメージセンサ
撮像部に投影された二次元画像を電気信号に変換する半導体デバイスのことです。
撮像部と、撮像部の信号を読み出すための走査回路から構成されています。
[2]ダイナミックレンジ
識別可能な信号の最大値と最小値の比率のことであり、単位はデシベル(dB)を用います。イメージセンサの場合、撮像可能なシーンの明暗比が十倍で20デシベル、百倍で40デシベル、千倍で60デシベルというように、明暗比が一桁大きくなるとダイナミックレンジは20デシベル増加します。
[3]無機材料イメージセンサ技術
松下電器産業(株)は世界で初めて無機材料によるイメージセンサを開発し、長期の屋外使用でも色あせや感度低下のないロバスト(堅牢)なイメージセンサを実現しました。
主な特長は、以下の通りです。
  1. 受光部のマイクロレンズおよびカラーフィルタを無機材料で形成することにより、屋外における20年相当の紫外線量を照射しても色あせ無し
  2. 面内で均一な感度を実現するデジタルマイクロレンズにより周辺部まで鮮明な画像が得られるため、超薄型カメラモジュール化を実現
  3. 1チップで可視光も赤外線も撮影でき、昼夜を問わず高感度を実現可能
  4. チップ実装時のリフロー工程など高温プロセスでも変色、色あせ、変形のない高耐熱性
(詳細は、2007年5月14日付け当社発表 プレスリリース「高耐候性、高耐熱性の堅牢なイメージセンサ開発」をご参照下さい。)
[4]デシベル(dB)
信号の強度比を表す単位のことです。
[5]画素
写真のフィルムに相当するイメージセンサの撮像部にマトリクス状に並んでいる赤、青、緑の色を検知する最小単位のことです。1つの画素は、光を受けて電気信号を発生するフォトダイオードと呼ばれる光電変換素子と、その信号を読出す働きをする部分から構成されています。
[6]グローバルシャッター
イメージセンサの全画素が一斉に光を電気信号に変換する駆動方式のことです。
[7]ローリングシャッター
イメージセンサの画素が一行毎に光を電気信号に変換する駆動方式のことです。

以上