松下電器産業株式会社
パナソニック四国エレクトロニクス株式会社
【要旨】 | 松下電器産業株式会社とパナソニック四国エレクトロニクス株式会社は、光の波長を高効率で変換する独自開発のQPM-SHG(*4)素子とファイバーレーザ(*5)の組み合わせにより、緑色のレーザ光を高効率に発生させる技術を開発しました。これによって、業界最高の電気光変換効率(従来比2倍)かつ業界最小(従来比1/2)のワットクラス・シングルモード(*6)・グリーンレーザ光源を実現しました。 |
【効果】 |
本開発のグリーンレーザ光源は、電気から光への変換効率が高いため、低消費電力でコンパクトなレーザ応用システムを実現することができます。 |
【用途】 |
・小型の産業用、医療用、バイオ用レーザシステム等 ・色再現性の優れたディスプレイ用レーザシステム等 |
【特長】 |
今回開発したグリーンレーザ光源は以下の特長を有しています。 1.電気から光への変換効率が7.3%と業界最高 2.レーザモジュールは15cm×15cm×1cmと業界最小 3.シングルモード1.7W緑色のレーザ光の連続した出力が可能 4. 仕様決定時に波長が選択可能 5.空間への放出だけでなくファイバー出力が可能 |
【内容】 |
本開発は以下の技術により実現しました。 1.QPM-SHG素子の製造技術 2.QPM-SHG素子を用いた光源の制御技術 |
【従来例】 |
レーザ光を高効率に発生させるレーザ光源として、赤色や青色の波長においては半導体レーザが実用化されていますが、緑色の波長のレーザ発振は半導体レーザでは困難でした。従来のグリーンレーザ光源としては、アルゴンレーザとDPSS(*7)方式レーザがあります。しかし、アルゴンレーザは大型で消費電力が多大でした。DPSS方式はアルゴンレーザに比べて小型化されましたが、さらに小型かつ低消費電力なグリーンレーザ光源が求められていました。 |
【特許】 |
出願済 国内43件 外国13件 |
【実用化】 |
グリーンレーザ光源のサンプル出荷開始 : 2008年1月 |
【照会先】
パナソニック四国エレクトロニクス株式会社 経営企画グループ 広報チーム 藤本秀夫 TEL: 089-966-1508 E-mail: fujimoto.hideo@jp.panasonic.com
【特長の説明】
- 光の波長を高効率に変換するQPM-SHG素子とレーザ発振効率の高い赤外半導体レーザ及びファイバーレーザとを組み合わせた構成により、電気から光への変換効率が7.3%と業界最高で低消費電力を可能にしました。
- 大きさは、今回開発品のレーザモジュールが15cm×15cm×1cmで、これに電源制御基板、電源、操作インタフェースが加わります。
- 緑色のレーザ光は、基本構成でシングルモード1.7Wの連続光です。さらに将来、高出力な構成についても提供していく予定です。
- 設計により変換波長が柔軟に変更可能なQPM-SHG素子と、あらかじめ選択した任意の波長が発振可能なファイバーレーザの組み合わせにより実現しました。
- QPM-SHG素子とファイバーレーザとの組み合わせで、シングルモードの回折限界に近い高品質なレーザ光が得られます。またレーザ光は単一偏光で、偏光比は100:1以上です。レーザ光は、空間への放出だけでなく、光ファイバーで出力させることも可能であり、これによって、レーザ光源の応用範囲が広がります。
【内容の説明】
1.QPM-SHG素子の製造技術
非線形光学結晶内部に結晶の自発分極が交互に反転した微細な分極反転構造を製造する技術を開発しました。QPM-SHG素子の製造にはμmオーダの周期分極反転構造を高いアスペクト比で形成する必要がありました。本開発では分極反転の成長を制御する新たな方法を開発することで、従来難しかった分極反転構造の均一化を可能にし、高効率のQPM-SHG素子の量産化技術を確立しました。
2.QPM-SHG素子を用いた光源の制御技術
QPM-SHG素子の出力安定化には精密な温度制御および波長制御が必要であり、新たな制御技術を開発することで、小型パッケージにおいても出力1Wを超えるシングルモード緑色のレーザ光の発生を可能にしました。
【暫定仕様】
|
【用語の説明】
(*3)グリーンレーザ
緑色(波長530nm近傍)のレーザ光を発生するレーザです。青色レーザ(波長450nm近傍)、赤色レーザ(波長630nm近傍)と併せてRGB光源となり、フルカラー表示が可能となります。また、緑色は他の波長に比べて人間の視感度が高いため、映像分野だけでなく医療、加工分野での活用が期待されています。
(*4)QPM-SHG
Quasi-Phase-Matched Second-Harmonic Generation(疑似位相整合方式第2次高調波発生)のことで、非線形光学結晶内で光の波が歪む効果(非線形光学効果)を利用して、光の波長を変換する方式の一種です。非線形光学結晶内部に周期的に結晶方位の異なる構造を形成することで、変換効率の向上を可能にします。
(*5)ファイバーレーザ
固体レーザの一種で、レーザ発振させる材料(レーザ媒質)にエルビウム(Er)やイットリビウム(Yb)等の希土類を添加した光ファイバーを用います。添加物の種類に応じた波長帯域で高品質なレーザ光を作り出すことができ、また、レーザの発振波長を比較的簡単に変更することができます。本グリーンレーザでは、緑色のレーザ光を得る際に必要な基本波となるレーザ光(波長1060nm近傍)を発生させるために、Ybを添加した光ファイバーを赤外半導体レーザのレーザ光で励起する構成のファイバーレーザを用いています。
(*6)シングルモード
レーザ発振器から出射された光線の断面が真円になる高いエネルギー密度の良好なビーム品質モードのことで、長距離通信や高精度測定に使われます。
(*7)DPSS
Diode Pumping Solid State の略でレーザダイオード励起固体レーザのことです。KTP(KTiOPO4)、LBO(LiB3O5)等の非線形結晶を使用し緑色のレーザ光に変換します。信頼性を高めるために結晶の潮解性や発熱への配慮が必要です。
モジュールブロック図 | モジュール外観写真 |