【要 旨】
松下電器産業(株)は、高画質化・低価格化が急激に進む液晶TV用のモジュールに最適な、業界最小の消費電力ならびに業界最高速の I/F(インターフェース)を 搭載した ソースドライバLSI [1](MN83896シリーズ)を開発し、2007年12月より量産出荷を開始します。
【効 果】
本製品を使用することにより、画面のフルHD化や動画を鮮明に表示するための 倍速フレーム化[2] など、市場における液晶TVの高画質化を実現します。 さらに、このソースドライバLSI を用いることにより部品点数が減るため、液晶パネルモジュールのコストダウンに貢献するだけでなく、アセンブリ工数を削減できるため、液晶パネルモジュールの品質向上にも 繋がります。
【特 長】
本製品は以下の特長を有しております。
- ドライバLSI 内部の電力消費による発熱が半減することにより、ドライバLSI の多出力化が可能になり、ドライバLSI 使用個数の削減が可能
- 業界最高速のデータ転送I/Fにより、高画質化に必要とされるフルHD倍速駆動時に、従来の4分割駆動による水平方向のデータ転送が、2分割駆動対応によりデータ配線削減が可能になり、 基板面積の削減が可能
【内 容】
本製品は以下の技術によって実現しました。
- 液晶モジュール駆動法の中で、低電力化に有効なため主流になりつつある カラム反転駆動[3] において、LSI の消費電力を最大50%削減可能とする新駆動技術
- ドライバLSI に高速で供給されるデータを、新規の信号分周回路で低速ロジック信号に変換し、ドライバLSI 内部での安定動作を実現するとともに、業界標準比 1.45倍の高速データ転送を可能にする速度変換回路技術
【従来例】
従来の液晶TV用ソースドライバLSI では、ドライバLSI の発熱が問題であり、高画質化へ対応するためには、使用するドライバLSI の個数を増やすか、放熱対策をして多出力化をすることが必要で、 コスト的にも課題でした。従って、放熱対策なしで多出力化が可能な新規技術に基づくドライバLSI が求められていました。
【実用化】
量産出荷開始 : 2007年12月
【照会先】
半導体社 企画グループ 広報チーム 中小路 陽紀 TEL:075-951-8151 E-mail: semiconpress@ml.jp.panasonic.com
【特長の説明】
- ドライバLSI の消費電力による発熱が半減することにより、ドライバLSI の多出力化が可能になり、ドライバLSI 使用個数の削減が可能
- 業界最高速のデータ転送I/F により、高画質化に必要とされるフルHD倍速駆動時に、従来の4分割駆動による水平方向のデータ転送が、2分割駆動対応によりデータ配線削減が可能になり、 基板面積の削減が可能
液晶TV の激しい低価格化に対応するため、1つのLSI からのさらなる多出力化により、使用するドライバLSI の個数を削減したい要望がありますが、発熱量が増えるため、
従来は放熱シートをつけて多出力化をしていたため、コスト増になっていました。
今回開発したMN83896シリーズでは、主流になりつつあるカラム反転駆動時で
解像度 | : | フルHD(1920画素×1080画素) |
フレーム周波数 | : | 120Hz |
データ線負荷 | : | 150pF |
駆動電圧 | : | 15V |
入力データ | : | 00-FF |
出力数 | : | 720出力 |
という、標準的な高画質化液晶TV での使用を前提とした条件下で、従来のドライバLSI では消費電力が0.87W のところを、本製品では0.44W に抑えることができます。したがって、放熱シートを付けずに出力数をさらに増やすことが可能になります。
液晶TV の高画質化に対応するため、下記のような手法が採用されていますが、フルHD かつ倍速駆動(120Hz)を採用した時に必要なデータ転送レートは、
色階調を8bit、データペア[4] を6ペアで考えた時、分割駆動無し(データ配線:6ペア=12本)では、500MHz(1Gbps)、2分割駆動(24本)では、250MHz(500Mbps)、4分割駆動(48本)では125MHz(250Mbps)となります。
(1) 解像度 … WXGA(1366画素×768画素)からフルHD(1920画素×1080画素)へ
(2) フレーム周波数 … 60Hzから120Hzへ
液晶TV の標準的なデータ転送I/Fである従来の mini-LVDS[5] は、周波数が172MHz(344Mbps)なので4分割駆動での対応しかできませんが、MN83896シリーズでは、mini-LVDS方式で250MHz(500Mbps)まで対応できますので、
2分割駆動による基板上の配線面積の削減が可能です。
【内容の説明】
- 液晶モジュール駆動法の中で、低電力化に有効なため主流になりつつあるカラム反転駆動において、LSI の消費電力を最大50%削減可能とする新駆動技術
- ドライバLSI に高速で供給されるデータを、新規の信号分周回路で低速ロジック信号に変換し、ドライバLSI 内部での安定動作を実現するとともに、業界標準比 1.45倍の高速データ転送を可能にする速度変換回路技術
ソースドライバLSI 電力の8〜9割は、液晶モジュールとの充放電で消費されますので、液晶モジュール駆動回路がLSI 消費電力の8〜9割を占めることになります。 これを削減するため、従来から多数本持っている電源に、充放電電流を効率的に分散させる新駆動出力回路を開発することにより、LSI 消費電力の約50%削減を実現しました。
mini-LVDS の信号を受けるドライバLSI 内部の差動部で低速ロジック信号にまで変換するために、高速な入力データを分周する新規回路を導入しました。 これにより、外部入力が高速になってもドライバLSI 内部を安定動作させることに成功し、業界最高速のデータ転送が可能になりました。 また、本技術を使用することで、今後さらなる高画質化に求められる、色階調10bit、データペアが8ペアの時でも、MN83896シリーズと同様に2分割駆動が可能になります。
【暫定仕様】
品番 | MN83896シリーズ |
---|---|
出力数 | 720出力 |
I/F | mini-LVDS 250MHz@2.5V |
入力振幅 | 150mV〜600mV |
Data setup/hold |
0.8ns/0.8ns |
出力遅延時間 | typ. 1.8μs max. 2.5μs@90%収束時間 |
電源入力 | アナログVDD、デジタルVDD、VSS、階調電源他 20本。 |
パッケージ | 48mm COF[6] |
【用語の説明】
- [1] ソースドライバLSI
-
TFT液晶パネルのソース・バスライン(データ側)を駆動するためのLSI のことです。
- [2] 倍速フレーム化
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通常の毎秒60コマ(60Hz)の映像を倍の120コマ(120Hz)に増やし、液晶TVの残像感を低減する技術のことです。
- [3] カラム反転駆動
-
通常DC電圧では液晶が劣化するため、AC的に電圧を印加します。AC電圧の与え方の手法の一つで、ソース・バスライン(列=カラム)の全数書き込んだ後に反転をする方式のことです。
- [4] データペア
-
「+」 と 「−」 の2本の信号線でデータを送る時の差動入力のペアのことです。
- [5] mini-LVDS
-
mini-LVDS(Low Voltage Differential Signaling)は、LCDモニタの高解像度化、大画面化に対応しながら、配線数の削減による低コスト化、小振幅伝送による低EMI 化を実現する技術の名称です。
- [6] COF
-
Chip on Flexible PCB(or Chip on Film)。フィルム状のプリント基板にIC を実装する技術