松下電器産業株式会社 パナソニック システムソリューションズ社(代表者 遠山敬史)は、総務省の「ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発」※2の一環として、2007年2月20日より約1ヶ月にわたり、青森県弘前市立大成小学校において「子ども見守りシステム」の実証実験を行いました。これは「いつでもどこでも誰でも恩恵を実感できるユビキタス・コミュニティ」※1の実現に向け、積雪・寒冷地でのシステムの安定性や、システムが地域社会にスムーズに受け入れるかなどを確認するために、小学生及びその保護者を対象に行ったものです。
【実証実験の項目と結果】
:112名の登下校通過履歴を100%の高精度で検知
2006年2月に当社が参画した大阪市内での実証実験では、一部の生徒の電子タグケースの脱落が発生しました。そのため今回新たに装着方法を改善した小型の電子タグケースを開発し、その性能確認を行いました。また降雪・積雪時でのハイブリッド電子タグ※3の検出能力とネットワークカメラによる生徒の画像データ取得精度の検証を実施し、より厳しい環境下でのシステムの安定性を検証しました。
:降雪・アンテナ着雪により、伝送能力は約1/4となることを確認
大阪市内での実証実験では、車の通行や長時間停車時により、無線電波が妨げられるなど無線伝送路の安定性確保に課題がありました、これらの障害に対応する冗長経路制御技術※5を確立する研究のために、降雪・積雪地域における無線ネットワークの脆弱性を確認しました。なお大阪市内での実証実験では、5GHz帯無線アクセスシステム※6によって通信ネットワークを構成しましたが、新たに、より長距離での伝送を想定した25GHz帯無線通信※7を採用しました。
:約88%の保護者が「今後も継続的に『見守りシステム』を設置してほしい」と回答
実証実験に参加した小学生代表ヒヤリングや、実験終了後への保護者に対するアンケート結果などから、当該システムの使用者の意見収集や地域受容性の調査研究を行いました。
【報道関係者様問い合わせ先】
松下電器産業株式会社 パナソニック システムソリューションズ社 コミュニケーションチーム 遠田(えんだ) 電話:045-540-5321 URL:http://panasonic.co.jp/sn/psn/
【実験風景】
実証実験協力先:弘前市立大成小学校 |
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正面入口天井内にタグリーダを埋込み |
25GHz帯無線通信装置※7を設置 |
【実証実験概要】
本実証実験は、2006年2月に大阪市内で実施された実証実験に提供した「街角見守りセンサーシステム」の機能改善と積雪寒冷地での動作検証を目的に、弘前市立大成小学校様・青森県企画政策部情報システム課様・弘前市企画部情報政策課様の協力を得て、無線多段中継ネットワーク※4による画像伝送機能を持つ「見守りセンサーノード※8」3台とネットワークカメラ3台を学校の正門などに設置、同小学校に通う3年生と5年生の生徒のうち、保護者の同意を得た112名のランドセルにハイブリッド電子タグ※3を取り付け、登下校時の画像・時刻を保護者の携帯電話・パソコンに配信したものです。
【実証実験の結果詳細】
(1)新電子タグケースの確認、降雪・積雪時でのシステムの安定性の確認
112名の登下校通過履歴を100%の高精度で検知、小型電子タグケースの有効性を確認
<履歴検知>
2007年2月20日から土日を除く延べ20日間の登下校時通過履歴を実験参加全生徒について実施しました。
- アクティブタグによる登下校検知率100%を実現
- パッシブタグによる生徒の画像撮像率は登校時平均93.1%、下校時平均90.3%
- 通知メールサービスの遅延・誤配信・未配信はゼロ
<小型電子タグケースの有効性確認>
本システムではハイブリッド電子タグ※3のうち、アクティブタグが生徒の通過履歴を検出する構成としています。大阪市内で実施した実証実験では、生徒がランドセルをロッカーなどへ出し入れする際に電子タグケースが破損したり、ランドセルへの取り付け不備による落下・紛失などが要因で、通過履歴の検知率低下(99.5%)が発生しました。
今回の実験では以下の改良を行ったケースを開発。校舎の出入り口(下駄箱スペース前)における通過履歴100%の検知を実現しました。
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〔主な改良項目〕
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(2)広域エリア無線多段中継伝送※4の降雪・積雪影響の実機による測定
<測定結果>
測定環境: | 天気:雪、最低気温:-0.6℃、最高気温:4.3℃ 降水量:7mm/通信距離37m(約4mm厚ガラス板2枚) 降雪状態での25GHz帯小電力データ通信装置・実機測定を実施 |
<無線ネットワーク冗長経路制御技術※5開発における本実験の位置づけ>
街中への設置が想定される当該「子ども見守りシステム」は、多数のセンサーノード※8を、低コストで整備する必要があります。 大阪市内での実験で検証されたように車の通行や長時間停車時により、無線電波が妨げられるなど無線伝送路の安定性確保に課題があり、早急に実効があがる冗長経路制御技術※5を確立する必要があります。 本実験では、「自然環境」が及ぼす無線電波障害によるシステムへの影響も「実機」で確認することで、実用的なシステム開発へ向けたデータ取得を目的に行いました。 |
(3)地域社会の受容性に関する調査研究
<生徒との公開ヒヤリング結果> 2007年3月7日 大成小学校(生徒4名)
実証実験期間中、生徒の代表とのヒヤリングを実施、実験参加の感想の他、電子タグケースのデザインなどの改善要望などの意見をいただきました。
(主な意見)
- 登下校の状況が分かるのでお母さんも安心している。
- タグケースの色などデザインに工夫が必要。
- 夕方になる画像が見づらいので、改良した方が良い。
<保護者アンケート結果> 2007年3月20日 筆記回収数103件 回答率 92%
- 約88%の保護者が「今後も継続的に『見守りシステム』を設置してほしい」と回答。
- 「設置場所」では、71%の保護者から学校だけでなく、通学路や公園など街角にも設置欲しいと回答。
- 「電子メールでの登下校通知」は、約7割の利用登録者のうち約97%が「安心感が高まった」と回答。
- 「画像による登下校の確認」は、約5割の利用登録者のうちの約82%が「安心感が高まった」と回答。
(自由記述 複数意見抜粋)
- 実際に利用してみると、思ったより簡単に操作できるし便利な物だと思った(3名)
- 登下校の時間が確認できて安心であった(17名)
- 家に無事帰宅したかどうかが分かればもっと安心感が違う(3名)
- 学校だけでなく、通学路上の数ヶ所に設置した方が、より確実に安心感が増すと思う(7名)
(アンケート結果抜粋)
Q:今後も継続的に「見守りシステム」を設置してほしいと思いますか?
(対象:103名) |
Q:「見守りシステム」は、どこに必要だと思いますか?
(対象:103名) |
Q:電子メールを利用した登下校通知によって、安心感が高まりましたか?(利用した方のみ)
(対象:69名) |
Q:カメラ画像をインターネットで確認する事で、安心感が高まりましたか?(利用した方のみ)
(対象:50名) |
なお当社は、街角見守りセンサーシステムを「Interop Tokyo 2007」(2007年6月13日(水)〜15日(金) 幕張メッセ)の「松下電器グループブース(ホール7)」に出展します。
当社は、本実証実験で得たデータの結果に基づき、ユビキタスネットワークの基盤技術研究開発の確立を加速し、地域が抱える諸課題を解決し得る先進的なICT技術のユビキタス・コミュニティの早期実現にむけたアプリケーション開発にも取り組んでまいります。
※1 | ユビキタス・コミュニティ:いつでもどこでも誰でも使えるブロードバンドネットワーク基盤の整備を図るとともに、産学官民の協働により、地域社会に密着した分野で先進的な取組みモデルを構築し、地域の抱える諸問題の解決が図られるような地域社会 |
※2 | ユビキタスセンサーネットワーク:多種、多様かつ大量のセンサーから収集される膨大な情報を適切に処理し、人・モノの状況やそれらの周辺環境などを的確に認識し、自律的な情報流通に基づいて状況や周辺環境に即した最適な動作を行う、ユビキタス時代に即したセンサーネットワーク 詳細は、 http://panasonic.co.jp/pss/rd/usn/ を参照ください |
※3 | ハイブリッド電子タグ:パッシブタグ(リーダ/ライタからの電波のエネルギーにより情報をやりとりする電子タグ)とアクティブタグ(内蔵の電池などからのエネルギーにより情報をやりとりする電子タグ)の2種類の異なる電子タグを同一電子タグケースに搭載 |
※4 | 多段中継伝送/ネットワーク:複数の中継器を経由するネットワーク |
※5 | 冗長経路制御技術:非常時に備えて、使用している通常の通信回線とは別にバックアップ回線を用意、又は複数の通信ルートを設定し、切り替えられるようなネットワーク制御技術 |
※6 | 5GHz帯無線アクセスシステム:屋外でも利用可能な高速インターネットアクセスを可能とする4.9GHz から5.0GHz までの無線アクセスシステム、無線局免許・無線従事者の登録が必要 |
※7 | 25GHz帯無線通信:準ミリ波帯小電力データ通信システム用の無線通信装置、無線局免許・無線従事者がなくても運用可能 |
※8 | センサーノード:屋内外で多数のサービスへ対応することを可能とする、マルチセンシング機能を有した無線通信端末 |