【要旨】 | パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社(横浜市、社長:櫛木好明)は、当社の次世代移動通信開発活動の一環として「時空間伝送路模擬システム」を開発、3.9G以降の移動通信方式(3GLTE[1]/IMT-Systems Beyond 2000[2])に向けた端末・方式開発を加速いたします。 | ||||||||||
【効果】 | 本システムは、次世代移動通信方式であるMIMO通信方式[3]やマルチホップ通信方式[4]の実際の電波空間を容易に机上で再現でき、受信信号の解析および方式検討が行えるため、端末あるいは方式開発の大幅な効率化を実現します。 | ||||||||||
【特長】 | 今回開発した時空間伝送路模擬システムの特長は以下の通りです。
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【内容】 | 本システムは主に以下の技術によって実現しています。
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【従来例】 | 従来、MIMO等の方式開発を行うためには、最初にシミュレーションレベルで開発・評価を行い、実際の評価・検証・パラメータ調整は装置を試作し、実際のフィールド実験を行うまで待たなくてはなりませんでした。 | ||||||||||
【特許】 | 国内6件(出願中を含む) | ||||||||||
【備考】 | ITU Telecom World2006(香港、2006年12月4日〜8日)に出展します。 |
【特長の詳細説明】
1.周波数範囲や信号帯域を限定しないため、さまざまな電波空間を再現可能
IMT-Systems Beyond IMT-2000は現在、ITU[8]のStudy Group移動通信部会(SG8)内の 作業部会WP8Fにて使用周波数帯、割り当て周波数帯域幅、要求仕様の検討が行われています。本システムはWP8Fにて議論が行われている周波数の80%近くに対応できるように設計されています。具体的には800MHzから5.3GHzまでの周波数帯に対応することができます。信号帯域幅は最大100MHzです。
2.アンテナ数、アンテナ構成のパラメータ変更にも柔軟に対応
使用アンテナ数、アンテナ構成などは方式開発上重要なパラメータです。しかしながら、アンテナ数が増すごとにシステムの複雑さが巨大になり、装置コスト、運用コストも大幅に増加します。本システムはアンテナ系列1チャネルごとに独立した装置構成となっており、方式検討の進展と共にシステムを発展することができるようになっています。最小アンテナ構成はSISO[9]の1×1、最大アンテナ構成はMIMOの8×8となっています。
3. 方式開発段階から、端末実機評価レベルのシミュレーションが可能
通信方式の研究開発段階では通常、研究開発者独自のCまたはC++言語で作成したプログラムによるシミュレーションが行われます。また、最近では処理関数の豊富さ、解析表示機能の充実からMathworks社製のMatlab®が使用されることが多くなっています。本システムはWindows®アプリケーションのプロセス間通信の主流であるActiveX®インタフェースを持つことで、これらのWindows®アプリケーションとのプロセス間通信に対応します。これにより、研究開発の初期の段階に作成したシミュレーションプログラムを使用して、本システム上で送信信号に伝搬路状態を重畳し、その受信信号を読み込み、復調することができます。また、アンテナを経由した実機レベルでの検証にも移行することが可能になっています。
4. 現行の標準モデルから、実際の時空間に近い複雑な環境条件までも再現できる自由度の高い時空間の再現が可能
使用する伝搬路プロファイルは振幅、位相、遅延時間、ドップラー広がり、DoA[10]、DoD[11]等の集合をxml形式で記述されます。この柔軟なファイル形式により、統計的モデル、絶対的モデル、動的モデル、静的モデルに柔軟に対応することができます。
● | Microsoft®、Windows®、ActiveX®は米国マイクロソフトコーポレーションの米国およびその他の国における登録商標、または商標です。 |
● | Matlab®は、米国MathWorks社の米国およびその他の国における登録商標、または商標です。 |
【模擬システムの画面例】 | 【システム構成例】 |
【用語の説明】
[1] | 3GLTE 現在国際業界団体3GPPにて標準化作業が進められている移動通信規格で第3世代移動通信システムとIMT systems beyond IMT-2000の間の規格。20MHz信号帯域幅で100Mbps程度の伝送速度を目標としている。 |
[2] | IMT systems beyond IMT-2000 現在の第3世代移動通信システムの後継システム。2003年のITU無線通信総会でフレームワーク勧告が承認された。低速移動環境で1Gbps、高速移動環境で100Mbpsの高速データ伝送を目指す。なお、ITU内のStudy Group 8、WP8FではIMT-Advancedと呼ばれている。 |
[3] | MIMO (Multi Input Multi Output) 送信側から複数のアンテナで送信し、受信側で複数のアンテナにより受信するシステム。2つの独立したデータストリームをそれぞれのアンテナから送信することで並列通信を実現し、周波数の利用効率を高めることができる。 |
[4] | マルチホップ通信システム 移動端末間で情報を中継またはやりとりすることで、自立分散型のネットワークを築いたり、基地局セル範囲を補うことができる方式 |
[5] | 広帯域位相補償技術 周波数帯ごとに複素補正係数を持つことで広い周波数範囲を補償する技術 |
[6] | アンテナ素子マトリックススイッチ技術 複数の受信アンテナと複数の送信アンテナ間の全ての組合せ接続を実現するためのスイッチング技術。当社では高速シリアル信号のループ接続により小さな回路規模でこの機能を実現している。 |
[7] | 信号送受方位重み付け技術 送信アンテナ構成、受信アンテナ構成、DoD、DoAから導いた位相を受信アンテナ素子ごとに伝搬チャネルデータへ重畳する技術 |
[8] | ITU (International Telecommunication Union) 国連の一機関で国際的な周波数の割当てを行う国際電気通信連合のこと。 |
[9] | SISO(Single Input Single Output) 送信側からひとつのアンテナで送信し、受信側でひとつのアンテナにより受信するシステム |
[10] | DoA(Direction of Arrival) 電波を受信した角度 |
[11] | DoD(Direction of Depature) 電波が放射された角度 |
以上