Panasonic Newsroom トッププレスリリース業界初 センサーネットワーク向けマルチモード無線通信技術を開発

プレスリリース

2014年3月28日

無線周波数、無線規格を気にせず機器や設備のネット接続が可能に

業界初*1 センサーネットワーク向けマルチモード無線通信技術を開発

最大3モードに対応し省電力で、安定したM2M通信を実現

*1:2014年3月28日、当社調べ

【要旨】

パナソニック株式会社は、人を介さずに機器同士が自律的にデータを送受信する「M2M(Machine to Machine)センサーネットワーク」[1]向けの無線通信技術を開発しました。国や用途によって異なる方式、標準、規格(以下、無線通信モード)を、無線LSIで同時検出し、無線通信モード間のソフトウェアを共用化することで回路規模や信号処理量を削減し、小型・長時間駆動が可能な無線モジュールが構成できます。これにより機器接続の利便性を高め、センサーネットワーク用無線[2]の普及を加速し、安心・安全、快適・便利な社会の実現に貢献します。

【効果】

機器をネット接続する上で国や地域毎に多くの異なる無線通信モードがあるのが現状です。本技術は無線通信モード毎に必要であった受信回路を一つに統合することで、周波数や規格を気にすることなく機器や設備同士を安定に無線接続することが可能です。無線LSIのチップ面積を削減し、最大3モードに同時対応しながら、従来のシングルモード用無線受信部と同等サイズで約20年の電池駆動が可能*2な小型で省電力な無線通信モジュールが実現できます。

*2:スマートメータやHEMS子機用途で30秒に1回の間欠レートの機器間通信を産業用リチウム電池(容量1200mAh)で行った場合

【特長】

本開発は以下の特長を有しています。

  1. 無線規格や無線周波数帯に依存されない、多様な機器・設備への適用が可能
  2. 消費電力に影響する無線モジュールの受信電流を約55%削減(当社従来比)し、20年の電池駆動が可能
  3. シングルモードと同等サイズでマルチモードに対応する小型無線通信モジュールを実現

【内容】

本開発は、以下の技術により実現しています。

(1)ハードウェアによる直接的な周波数成分検出、無線通信モード間におけるソフトウェアの共用化による低消費電力化、およびメモリ容量の増加抑制から成るマルチモード対応技術

(2)回路電流を最小化するインテリジェント電源電圧制御、および消費電流の少ない高速タイミングクロック生成で、異なる無線通信モードに同時対応しつつ、約20年の電池駆動を可能にする受信電力低減化技術

(3)発振回路のコイル面積の縮小と、アナログデジタル変換回路のフィルタレス化による無線LSI小型化技術

【従来例】

異なる無線通信モードに対し、同時受信する無線LSIを実現するには、個別にLSIが必要で、回路規模やソフトウェア処理も増加するため、実用的な事例がこれまでありませんでした。

【特許】

国内26件、外国19件(出願中含む)

【備考】

本開発は、総務省「マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術の研究開発」成果の一環です。また本開発成果を実際の場で検証するため、本日より東京大学先端科学技術研究センター内にあるICT実証フィールドで検証実験を開始します。

【お問い合わせ先】

R&D本部 広報担当 E-mail:crdpress@ml.jp.panasonic.com

【内容の詳細説明】

1. ハードウェアによる直接周波数成分検出と、無線通信モード間のソフトウェア共用化により、低消費電力化とメモリ容量の増加を抑制するマルチモード対応技術
センサーネットワーク無線の受信信号処理で用いられる従来のFSK[3]復調回路は、Arctan方式[4]など、時間軸上で信号を観測し周波数を検出して復調します。異なる周波数帯や無線規格など複数のモードの信号を受信するためには、その受信信号に混入している雑音を所定の帯域幅に応じて除去する必要があり、無線通信モードの数だけ無線LSIが必要という課題がありました。
今回、Short-time DFT[5]を用いた異なる無線通信モードの周波数成分を同時に検出し、そのモードの伝送レートをハードウェアで判定する技術と、受信した伝送レートに最適な制御をする復調器を開発しました。さらに、ハードウェアで判定した伝送レートに応じてソフトウェア制御を切り替える方式を、モード間のソフトウェアの共用化を図ることにより新たに開発しました。これにより、無線通信モードの数だけ必要であった無線LSIを1つで構成することが可能になりました。

2. 回路電流を最小化するインテリジェント電源電圧制御、および消費電流の少ない高速タイミングクロック生成で、異なる無線通信モードに同時対応しつつ、約20年の電池駆動を可能にする受信電力低減化技術
従来、各無線回路を安定に動作させるためには動作周波数や温度に関わらず一定電圧を供給していました。しかし、動作周波数や温度条件によって必要な回路性能を得るには、一定電圧に保つための電力が必要となり、結果として不要な電力を消費してしまうという課題がありました。
今回、回路に求められる性能を維持しつつ、動作周波数、温度、素子バラツキによって電圧自体をダイナミックに制御し回路電流を最小にする、インテリジェント電源技術を開発しました。これにより、受信時に最も多くの電力を消費していた高周波発振回路の消費電流を従来と比較して約70%削減することができました。
また従来、受信した信号を処理するアナログデジタル変換回路[6](以下、ADC)は高いSN比[7]が要求されるため、高速なタイミングで動作させるため、100MHzの高速クロックからタイミング生成用のパルス状クロックを抽出する回路を用いていますが、消費電力が増加するという課題がありました。
今回、低速クロックの立ち上がり部分を用いて、高速クロック利用時と同等のタイミング生成用パルス状クロックを生成する技術を開発しました。これにより、従来、高いSN比を実現可能なΔΣADC[8]と比較して、同等のSN比を実現するSAR-ADC[9]を新たに開発し、当社従来比で消費電力を約60%削減しました。

3. 発振回路のコイル面積の縮小と、アナログデジタル変換回路のフィルタレス化による無線LSI小型化技術
従来の発振回路では、トランジスタの素子ばらつきに起因する回路電流の増加を抑えるには、大きなコイルが必要でした。今回開発したインテリジェント電源制御で素子ばらつきを補正するにより、発振周波数を2倍にすることが可能となりました。 これにより、コイルの大きさを小さくできると共に、1/2の分周器で構成する、低消費電流で小型な発振回路を実現しました。
また、これまでのアナログデジタル変換回路では、所望の性能を達成するためにΔΣADC方式を採用する必要がありましたが、SAR-ADCで構成することにより、フィルタレスの小型アナログデジタル変換回路が実現できました。

【用語の説明】

[1] M2M(Machine to Machine)センサーネットワーク
従来の人間同士の通信に対し、ネットワークに繋がれた機器同士が人間を介在せず、相互に情報交換し、自動的に最適な制御やサービスが行われるシステム
[2] センサーネットワーク用無線
家庭における温湿度、照度、使用電力のセンサーなど、センサーで検出される様々な環境データをワイヤレスで伝送するための無線システム
[3] FSK
デジタル変調の方式の一つ(Frequency-shift keying)
[4] Arctan方式
FSK変調の復調方式の一つで、信号をアークタンジェント演算して位相偏移を検出して復調する方式
[5] Short-time DFT
Short-time Discrete Fourier Transformの略。瞬時の時間で離散フーリエ変換を演算して復調する方式
[6] アナログデジタル変換回路
アナログ信号をデジタル信号に変換する回路
[7] SN比
Signal to Noise Ratio の略称。信号電力と雑音電力の比を示す指標
[8] ΔΣADC
Delta Sigma Analog to Digital Converterの略。 1つ前のデータとの差分を累積し誤差を高精度に判定し出力に反映させる高精度なADC
[9] SAR-ADC
Successive Approximation Register Analog to Digital Converterの略。 2分探索法を用いて、入力信号を1ビットずつ変換するADC

開発した統合無線技術を適用した試作モジュール

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